不動産売却の注意点|査定価格から売却後の税金まで!状況別にわかりやすく解説
2020年東京オリンピック開催やインバウンド需要の影響で不動産投資が注目を浴びています。
野村不動産アーバンネット株式会社が2018年に発表した、「2018年度の不動産投資に関する意識調査(第10回)」では、「これから買い時」「間もなく買い時がくる」と答えた人は、約6割にのぼっており、需要が高まっていることがわかります。[注1]
そのため、不動産を売却するには適した時期といえますが、不動産売却は業者に依頼して完了ではありません。
自分でも注意すべき点があります。
今回は不動産売却時の注意点と、売却前の不動産査定についての注意点を状況別に解説します。
[注1] 野村不動産アーバンネット株式会社 018年度の不動産投資に関する意識調査(第10回)
目次
1. 相場を調べる際は多角的なデータを用いる
不動産は、業者に査定を依頼してから売却にうつります。
ここで大事なのが、売却相場を自分でも調査しておくことです。
不動産売却時の価格は、周辺の同じような物件の価格、過去の取引価格、路線価や固定資産税評価額など、複数の情報を用いて多角的に分析しましょう。
例えば土地であれば、国土交通省が発表している、地価公示や地価調査といった公的なデータを活用できますし、中古マンション・一戸建ての場合は、国土交通大臣が指定した公益法人、指定流通機構(REINS)が発表している、実際の取引価格情報なども活用できます。
2.業者を選ぶ際は相見積もりを必ずとる
自分でも適正な売却価格が把握できたら、業者に見積を依頼しますが、必ず相見積もりを取ってください。
優良な業者を選ぶためにも、相見積もりをとることが重要です。
査定は3〜6社の不動産会社に依頼するのがおすすめ
不動産会社に査定を依頼する場合、一括査定サイトでまとめて複数社に依頼する方法が一般的です。
1社のみでは客観性に欠けますし、相場もよくわからないまま契約するのは危険です。
しかし、あまりに多くの業者に依頼しても対応が大変ですから、3〜6社くらいに依頼するのがおすすめです。
その中から信頼できる不動産会社を見つけましょう。
よく使われる無料査定サイト
そうは言っても、どの不動産会社に依頼していいのか迷う人も多いでしょう。
そこで気をつけたいのが、査定したい不動産の場所と種別です。
査定したい不動産が首都圏・関西圏など主要都市部にある場合は、大手の不動産会社にまずは依頼することをおすすめします。
なぜなら、都市部における不動産の売買仲介件数は大手3社が圧倒的に多いからです。
取引件数が多い分、似たような物件データを探しやすく、現実的な査定価格を出してもらえる可能性が高くなります。
そのあとは、地元の不動産会社にも査定の依頼をしてみてもいいでしょう。
もし、実際に販売を依頼するのであれば、最終的には営業マンの人間性で判断することが一番だと思います。
正確な査定金額は大手不動産会社が出しても、営業マンがいい加減な営業マンであれば、依頼したいとは思わないと思います。
不動産の売却については、信頼と信用が重要になります。
地方郊外や田舎にある不動産の場合は、複数の一括査定サイトか、地元の不動産会社に査定依頼するのがいいでしょう。
一括査定サイトも査定してもらいたい不動産のエリアに強い不動産会社があまり登録されていないケースもあります。
複数の一括査定サイトに依頼すれば、地方にある不動産でも安心です。
また、不動産会社には種別(マンション・農地・工場など)によって得手不得手があります。
特に農地や工場などの売却はそうした種別の取引経験が豊富な不動産会社に依頼したほうがいいでしょう。
査定では仲介価格(簡易・訪問)と買取価格の両方を出してもらう
不動産の査定にはいくつか種類があります。
もし、この3ヵ月以内に不動産売却する予定がない場合や、単に不動産の価値が知りたいだけでしたら、一括査定サイトで簡易査定を申し込むのが簡単でおすすめです。
しかし、売却を本格的に検討している場合は、実際に不動産を見てもらい、より現実的な価格が提示される訪問査定をしてもらうほうがいいでしょう。
相場の状況や売却戦略などの知識も得られます。
買取も扱っている不動産会社の場合は、買取価格も提示してもらいましょう。
不動産会社にとって無料査定は営業活動
不動産会社は媒介契約を結ぶか、買取した不動産を売却しないと利益が生まれません。
一括査定サイトの場合、登録サイトから紹介してもらうたびに料金を支払っているケースや、売却する側も相見積もりしているケースがほとんどです。
そのため、契約を取るため各社競争して価格を提示します。
実際の査定額よりも上乗せして少し高めの査定額を提示してくる不動産会社も多いです。
専門用語でいうと「高どり」と言われる言葉です。
営業が他社に勝つため、相手に有利な価格を提示してくるのと同じです。
なかには売れるはずのない高い査定額を提示してくる会社もあるので注意が必要です。
あくまで査定額は売却できる目安(予想)額なのだと認識しておきましょう。
ただし、次のようなケースは競争以外の理由でも差額が生じる可能性が高いです。
- 築年数20年以上のマンションで大規模内装リフォーム済み
- 小規模マンションで過去の売買事例が少ない
- 築年数が10〜20年の戸建て
「買取価格」も査定してもらうことがおすすめ
無料査定で提示された価格と実際に売却できる価格に差が出やすいことは既にご紹介しましたが、そうした場合は買取価格も査定してもらうことをおすすめします。
通常の査定は仲介価格で、この価格なら誰かは買うだろうと予想される価格です。
それに対して買取価格は、この価格ならその不動産会社が欲しい(買い取ってくれる)価格になります。
つまり、買取価格は、その値段で自社が買い取らなくてはならない可能性があるため、必要以上に高く査定できないのです。
仲介査定額がいくら高くても、実際に売れないまま時間が過ぎ、価格を下げることになるのなら、最初から確実に買い取ってもらえる価格を知っておくことは重要です。
ちなみに、買取業者が買取を直接した場合は、仲介手数料の3%はかかりませんので、多少金額が安くても、直接買取してもらった方がいい場合もあります。
査定してもらえない可能性があるケースも
不動産会社にとって無料査定はあくまで顧客を見つける営業活動ですから、査定しても契約につながる可能性が極めて低い物件は査定してもらえないかもしれません。
誰も買い取りそうもない不人気物件
過疎地域にある周囲が空き家だらけのエリアにある物件や、建て替え計画や取り壊し計画があるマンションなどは、新たな買い手が生まれる可能性は低いです。
そのため、あまり真剣に査定してもらえないかもしれません。
その場合は、活用という選択も入れておいてもいいかもしれません。
匿名で査定したい場合
不動産会社にとっては売却見込み客を探しているので、匿名では査定してもらえないケースがあります。
匿名でも査定してもらえるケースもありますが、その場合の査定価格の精度は低くなります。
売る気はないけれど、なんとなく家の価値を知りたい場合は、下記のサイトを利用しましょう。
特に査定をしてもらうのではなく、自分で、住所などを入力してざっくりとした相場を知ることができます。
売る気がないと思われた場合
「売る気はないけど、査定してほしい」本音はそうであっても、表に出してはいけません。
顧客になる可能性が低いとわかってしまったら、不動産会社もしっかり査定してくれません。
査定を依頼する以上、将来的には売買を依頼するかも、という前提で依頼することをおすすめします。
もし単純に査定金額を知りたいのであれば、先ほど記載した上記のサイトで相場を把握してください。
不動産一括査定サイトの選び方も重要
ネット上には多数の一括査定サイトがあります。
その中には素人同然の運営のものもあります。高額取引される不動産の売買に関することですから、しっかりしたサイトを選ぶことも重要です。
しっかりしたサイトかどうかの判断基準は以下を参考にしてみてください。
サポート体制がしっかりしている
高額な取引がある不動産なのに電話のサポートすらないサイトは、いざというときに連絡が取れなくなる可能性があるので、避けるべきでしょう。
悪徳業者は徹底的に排除している
登録している業者がしつこい勧誘などの迷惑行為をしたり、法に触れるような行為を行ったりしているなど悪徳業者とわかった場合どのように排除し、優良業者の登録維持のためにどのような対策をとっているのか、具体的な説明がされているサイトを選ぶことがおすすめです。
悪徳業者が登録しつづけているようなサイトは、被害が拡大しても気にしないと運営が考えていると思っていいでしょう。
査定できる物件種別が多い
査定可能な物件の種別が「戸建て・マンション・土地のみ」のサイトは、素人同然でも運営できるので、あまりおすすめできません。
ワンルームマンションなどの収益物件や事業用不動産(倉庫・工場など)は取引額も大きく、取引が活発なので、そうした不動産も扱っている不動産会社が登録されている場合はしっかりしたサイトである可能性が高いです。
査定できる物件種別が多い業者がどのくらい登録されているかは、いい一括査定サイトかどうかの判断基準の1つになるでしょう。
媒介契約は慎重に!査定価格を提示してもらう際は必ず査定書をもらう
不動産会社から査定価格を提示してもらう際は、口頭ではなく必ず査定書をもらいましょう。
口で「◯◯◯万円です」と言われていたとしても、実際の契約の際には違う金額を提示する可能性もあるからです。
言った、言わないといった余計なトラブルを避けるためにも書面にしてもらいましょう。
一括査定を利用して複数社に査定を依頼していても、最初に連絡があった業者の話を聞いてそのまま媒介契約してしまうケースもあります。
しかし、依頼した全ての会社の査定結果と意見を聞き比べてから、よく考えて契約することをおすすめします。
相見積もりを比べればその物件の相場もわかりますし、売買交渉の途中で価格調整をする際にも安心できます。
複数の不動産会社に査定を依頼できる一括査定サイトが便利
不動産の売却は高額になるため失敗は避けたいものです。
遠隔地にある不動産などでも簡単に査定できる一括査定サイトの利用は便利なのでおすすめです。
しかし、査定(仲介)価格と実際に売却・買取価格には差があるケースがほとんどですし、中には悪徳業者が混じっているかもしれません。
今回ご紹介した注意点を参考に、信頼できる不動産会社を見つけてくださいね。
2. 査定依頼時には査定額=売却額ではないことを把握しておく
不動産業者が提示する査定額は、必ずしも売却額ではありません。
不動産業者は、3ヶ月以内に売れる価格を目安として査定額を算出しています。
ですが、不動産に限らず、売買は需要と共有のバランスに基づいて行われます。
そのため、不動産を売却する際も、売り手が望む額と、買い手が望む額とのバランスがとれた額でなければ成約に繋がりません。
そのため、周辺に売却物件と同等の物件が、より安く売りに出されていれば、当然、安い方に買い手が流れてしまい、物件が売れ残るということもあります。
売値の値引きがされることもある
不動産を売却に出したとしても、売れ残っている場合は、何度か売値が値引きされることがあります。
また、買い手との価格交渉によっても値引きが行われることもあります。買い手との価格交渉で、望む売却金額が得られないと判断した場合、交渉を中止できますが、また買い手が現れるまで待つ必要があります。
内覧見学者があまり訪れないようであれば、次の買い手が現れるまで時間がかかることもあるので、交渉中止は慎重に判断しましょう。
3. 契約時には媒介契約は3種類あるということを知っておく
媒介契約とは、不動産売買、賃貸といった契約成立のための営業を宅建業者に依頼する際に発生する契約です。媒介契約には以下の3種類があります。
- 一般媒介契約 複数の業者に依頼する
- 専任媒介契約 特定の業者に依頼する
- 専属専任媒介契約 依頼をした特定の業者が見つけ出した顧客のみと取引する
このように、一般媒介契約では、複数の業者に依頼できるのに対して、専任媒介契約、専属専任媒介契約では、特定の業者のみの依頼になります。
業者としては、専任媒介契約、専任専属媒介契約であれば仲介手数料が発生する可能性が高くなるため、どちらかの契約を希望するものです。
ですが、信頼がおける業者が定まっていない場合は、複数の業者に依頼できる一般媒介契約を選ぶようにしておきましょう。
4. 相続した不動産を売却する際は相続登記を確認
相続した不動産を売却するときは、相続登記が行われているかを確認する必要があります。仮に親族が亡くなったことによって、不動産を遺産として相続しても、手続きが行われていなければ売却はできません。
なお相続登記は、法的に申請までの期限が設けられていないため、放置していたところで罰せさられることはありません。
ですが、手続きが行われていなければ、売却やローンの担保として不動産を扱えないので、注意が必要です。
複数名義で所有している不動産の売却は全員の合意が必要
親から相続した不動産を、兄弟らで共有している場合、売却時に共有している全員の同意が必要となります。
誰かひとりでも反対している場合は、強行して売却することはできません。
その後のトラブルを避けるためにも、全員の意志を確認してから売却にうつりましょう。
5. 売却時には手数料がかかることに注意しておく
不動産の売却が成約すると、不動産業者へ成功報酬として仲介手数料を支払います。
この額は、売却価格と比例していますが、以下のように上限が設けられています。
売却価格 | 手数料上限 |
---|---|
200万円以下 | 売却価格の5% |
200万円超〜400万円以下 | 売却価格の4%+2万円 |
400万円超 | 売却価格の3%+6万円 |
例えば、1,000万円で不動産を売却できた場合、(1,000万円×3%+6万円)×1.08=38万8,800円となり、38万8,800円の仲介手数料が発生します。
この仲介手数料ですが、無料を謳っている業者もあります。なぜ仲介手数料無料でも契約を結べるかというと、買い手からの仲介手数料に期待しているからです。
不動産業者にとっては、物件は商品のため、なんとしても確保したいものです。
そのため、売却時の仲介手数料が無料なのは、物件を集めようという気持ちの現れともいえます。
裏を返せば、仲介手数料を無料にしなければ、物件を集められないということです。
つまり、業者としての信頼に欠けるところもあるので、安易に「無料」に飛びつかないようにしましょう。
売却時にはローンの一括返済手数料がかかる
不動産購入には、莫大な費用がかかるため、多くの場合、金融機関からローンを組んで購入しています。
このローンも、不動産売却時には一括返済しなければなりません。
ローンを一括返済する際は、返済額に加えて手数料がかかります。
この手数料は相場が、3,000〜5,000円とされていますが、金利が変動しない、固定金利の場合は、3〜5万円の手数料が一般的です。
仮に、800万円のローン残高(固定金利)を一括返済する場合、手数料が3万円だとすると、800万円+3万円×1.08=867万2,400円を合計で支払う必要があります。
6. 不動産売却後は税金が発生することに注意
不動産を売却した後には、譲渡所得として売却収入に税金がかかります。
譲渡所得とは、譲渡所得=収入金額−取得費(購入費)−譲渡費用(売った時の費用)で求められます。
譲渡所得は所有期間で変わってくる
譲渡所得は、所得税と住民税の対象となります。この税率は、売却した年の1月1日時点で、不動産を所有していた期間によって変わってきます。
短期譲渡所得(所有期間5年以下)
39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)
長期譲渡所得(所有期間5年超)
20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
このように不動産売却時にかかる税金は、物件の所有期間によって大きく変わってきますので、売却のタイミングを推し量るようにしましょう。
不動産の売却は業者と一緒になって行おう
不動産売却にはプロである、不動産業者に依頼して行われます。
ですが、業者に一任するのではなく、自分で売却相場を調べたり、価格交渉に参加したりと、業者と一緒になって売却に臨む必要があります。
何も知らずに、全てを業者任せにしてしまうと、後で、「もしかしたらもっと高く売れたかも」「もしかして嘘つかれてる?」などの疑問が出てきてしまうと、信頼関係がなくなってしまうからです。
まとめ
不動産を売却するための注意点をご説明させていただきましたが、正直全てを把握しするのも難しいと思います。
不動産の売却で失敗しない一番の方法は、誠実で嘘をつかないで真面目で、信頼できる営業マンを見つけることなのかもしれません。
ご自身でもこれまで説明した注意点を把握しながら、対応してくれる営業マンが、その注意点について真剣に誠実に答えているのかを見るだけでも、売却は成功に近くと思います。
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